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フロイトの精神分析 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!-) 鈴木 晶(著) 1418円
初心者向きでありながら、生きた理解のための配慮のある良書
フロイト論や彼の研究を1つ1つ分かりやすく解説はするが、批判や著者の意見は控えている姿勢が実に良い。確かに、大勢において、フロイト論のいくつかは批判的に見られているものも多い。しかし、ここでは、フロイトの精神分析学がどのように発達したかという視点により、初心者向けの本でありながら、意外に生きた理解を与えようという配慮が見られる。
本書は、単に一般向けのお茶を濁すようなフロイト解説書ではないと思う。むしろ、本格的なフロイトの論文集が文字だけで読みにくい場合もあるのと比べ、絵を多用した本書は直感的に分かりやすいと共に、解説すべき部分はしっかりと丁寧に記述されている。
これを読んだ後であれば、フロイトの代表的な著書である「精神分析入門」や、その他の専門的な論文集も読みやすくなることは間違いない。
良書の見本のような本である。
難しい話をやさしく書くのも一種の才能!
この本を翻訳した鈴木氏は、ゲイの「フロイト」をはじめとした、精神分析関係の本を多く翻訳し日本に紹介している研究者であり、フロイト理論についてのもっとも深く理解している研究者の一人であろう。理解していてもそれを平易な言葉で書き表すことには別の才能が必要であるが、鈴木氏は、どうやらその才能にも恵まれているようだ。挿絵もわかりやすく、正確であり、あやしげな入門書や教科書が多い、精神分析分野の本の中でもっともお勧めの一冊である。
とりあえず、フロイトの理論と、その後継者達の潮流について概観を得たい、という人に
理論といえば、何か固定された枠組みがあるかのように捉えがちだが、本書でフロイトの理論がその生涯に亘って変遷し続けたことが分かる。
特に「欲動二元論の変遷」は、エロスとタナトスに至るまでの変遷が整理されていて助かる。
「無意識、前意識、意識」と「エス、超自我、自我」の関係は、本書でもスッキリとは分からない。元々、フロイト自身のその説明も分かり難いとは言われる所ではあるが。
『錯誤行為』という言葉については目からウロコ体験をした。
「日常生活における間違い(言い違い、書き違い、聞き違い、読み違い、度忘れ、置き忘れ、紛失等)をひっくるめて、日本の精神分析学では『失錯』とか『錯誤行為』とか呼んでいるが、いずれもフロイトの著作を翻訳するためにつくられた言葉である。つまり、これらの間違い全体を示すような言葉はない。ということは、これらの間違いがあることは誰でも知っていたが、これらをまとめて1つの現象として考えた人は、フロイト以前にはいなかったということである。」